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2015-02-07 09:02    男性二つ折り財布人気
 ドアの上の方に付いている監視孔から、怯えたふたつの目だけのぞかせ、しきりとなにやらボソボソと謝っていたのは図書夫で、雑居房の真中で腕を組み、目を細めて恐ろしげな低い声を出して、さんざんに脅していたのは私でした。  ドアの外の通路を自由にやって来て、雑居房に閉じこめられている懲役たちを、監視孔から覗いているといっても、私に脅しあげられているのですから、もちろんのこと、この図書夫も同じ懲役なのです。  懲役が塀の中でさせられる仕事には、私たちのように工場でこき使われる類のものだけではありません。羨ましくてたまらないようなのから、|配役《はいえき》されなかったのを、前科者の神様に心からお礼を申しあげたくなるほど|非道《ひど》過ぎるものまで、それはいろいろとありました。  奴隷のような……、と言うより、そのものといったほどの暮しでも、とにかく二千人以上の懲役たちが生きている府中刑務所ですから、塀の外の社会と同じように、ありとあらゆる仕事があったわけなのです。 「その仕事は嫌だ」  なんて言ったら最後、その懲役はたちまち「作業拒否」という重い反則で、|軽塀禁《けいへいきん》という罰を言い渡されて、懲罰房に叩き込まれて減食まで喰らい、仮釈放の淡い夢だって消えてしまうのですから、よほどのことでもなければ、懲役たちは逆らわずに、|官《ヽ》の命ずるまま、どんな仕事でもやったのです。  中には随分変った仕事をさせられていた懲役もいました。  腕のいいのが|官《ヽ》に知られてしまった散髪職人くずれの懲役は、構内に設けられている理髪室で、毎日毎日、看守たちの髪ばかり刈らされていました。  残飯を集めて豚を飼わされていた懲役なんかは、嫌な臭いが毛穴を通して、身体は筋肉の裏あたりまで、頭は頭蓋骨の合せ目を抜けて脳味噌の中まで、染み込んでしまったというのですから、これはたまりません。  私に|怒鳴《ウナ》られ、いじめられても逃げるわけにもいかないらしく、ただ困り果てて、|閉口垂《へこた》れていたドン臭い図書夫は、塀の中の本屋兼貸本屋のような仕事をさせられていたのです。  懲役の読める本は、差入れや自費で買う|私本《ヽヽ》と、刑務所が貸してくれる|官本《ヽヽ》との二種類があります。自分の金で本を買いたい懲役は、私本購入を願い出るのですが、この注文をまとめるのも、図書夫の仕事でした。  官本は月に二回、一人三冊までと決められていて、懲役たちが工場で働かされている間に、図書夫がそっくり交換してくれますが、この官本は全ておまかせで、懲役たちが選んだり好みを言ったりすることは出来ないのです。  その他に、|三月《みつき》に一度ほどでしたが、官本の分厚い目録が回って来て、読みたい本がある懲役が願い出ると、一人一冊に限って「|特貸《とくたい》」が許されるのでした。  懲役が特貸を願い出た本が、たまたま貸出中だったりした時は、著者とか本の内容から考えて、出来るだけ似た本を図書夫が選んで、貸出中と書いた伝票を添え、代りの本を舎房に入れておくのです。  ある時、同じ房の懲役が「熱帯魚の飼い方」というのを願い出たのですが、これが貸出中ということで、代りに「川釣り入門」というのが入っていたことがあって、雑居房の懲役は、その脈絡に首を捻ったのですけれど、多分これは口細やタナゴを、自分で釣って飼ってみてはどうだ、ということなのだろうと、その時ばかりは図書夫のセンスを盛んに褒めたのでした。  特貸の代りを探すのも、こんな具合になかなか頭を使うのですけれど、おまかせで定期に交換する官本にしたところで、雑居房だと三十冊ほどですから、本の組合せもいろいろ考えないと、文句も出るし、 「これは、学問のある懲役にさせなくては駄目だ」  と|官《ヽ》は考えたらしく、図書夫は皆、といっても五、六人でしたが、大学出の懲役ばかり選ばれていました。